国際NGOや国連機関、教育研究機関が参加する「教育を攻撃から守る世界連合(Global Coalition to Protect Education from Attack:GCPEA)」は、教育への攻撃の実態を明らかにする報告書『攻撃される教育2022(Education under Attack 2022)』を発表しました。
この報告書は、2018年と2020年に発表された報告書に続くもので、今年発表された報告書では、紛争の影響を受ける28ヶ国において、2020年から2021年に確認された、教育への攻撃や軍事利用について調査・報告しています。
新型コロナウイルス感染症の大流行により世界中の学校や大学が閉鎖されているなか、教育はたびたび暴力的な攻撃に晒されており、教育への攻撃や教育施設の軍事利用は、その前の2年間(2018年と2019年)と比較して増加していることが明らかになりました。
2020年と2021年、GCPEAが確認した教育への攻撃や学校・大学の軍事利用の事例は、5,000件を超えました。これらの事例で9,000人以上の学生や教育関係者が拉致されたり、一方的に逮捕されたり、負傷したり、あるいは殺害されたりしました。毎日平均6件の教育への攻撃や学校の軍事利用の事例が報告されています。
教育に対する攻撃と教育施設の軍事利用には、主に次の形態があります。
1)学校への攻撃
2)学校の生徒、教員、その他の教育関係者に対する攻撃
3)学校・大学の軍事利用
4)学校・通学路での子どもの徴兵・徴用
5)学校・大学・通学路での性暴力
6)高等教育(大学・研究等)への攻撃
上記のうち最も多いのは、1)学校への攻撃です。例えば、シリアでは、2020年から2021年に爆発性兵器を使用した学校や大学への攻撃が少なくとも70件報告されています。
報告対象となっている28ヶ国において、学校の生徒、教員、職員に対する攻撃事例は2020年~2021年に630件以上確認され、この攻撃で、2,400人以上の学生、教員、教育関係者が負傷や死亡、拉致、脅迫され、約2,300人が逮捕、拘束されたと報告されています。これらの事例は、2020年と2021年に、GCPEAが確認した教育への攻撃や学校・大学の軍事利用の5,000件を超える事例で、生徒や教員が死傷した事例とは別のものです。
2020年から2021年に確認された学校の軍事利用の事例は約570件にのぼり、前回の報告書の2倍以上になります。軍事目的で使用された教育施設が最も多かったのはミャンマーで、少なくとも200件が報告されています。国連は、軍事クーデターが発生した2021年2月から9月までの間に、治安部隊が176の学校や大学を使用したと報告しています。
教育への攻撃を止めるために、国際社会はこれまで取り組みを進めてきました。2015年に策定された、学校を攻撃から守り、軍事利用をやめるための政治宣言である「学校保護宣言」もその一つです。
2022年5月時点で、114ヶ国が賛同していますが、日本政府はまだ賛同を表明していません。また、国連安全保障理事会は、2020年9月に「学校への攻撃に関する議長声明」を、2021年10月に「学校保護宣言」に明示的に言及した「教育への攻撃に関する決議第2601号」を採択し、教育への攻撃や軍事利用について強い非難の姿勢を示しています。
しかし、ウクライナをはじめとして世界各地で学校への攻撃や軍事利用は現在も行われています。学校を攻撃から守るための解決策として、GCPEAは、以下を提言しています。
◆Global Coalition to Protect Education from Attack (GCPEA)の報告書特設サイト(英語)はこちら
◆セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの報告記事はこちら
◆日本語概要 フォーマット版はこちら
◆日本語概要(簡易版WORDは下記よりご参照ください。印刷はこちらが適しています)