【活動報告】9/27(金)「SDG4教育キャンペーン2024×伊奈学園中学校×立命館守山高校 協力企画 「『紛争下の教育』を知り、声を届けよう」を開催  

現在実施中の「SDG4教育キャンペーン2024」では、6月から9月にかけて、毎月1回のオンライン授業を行い、紛争下の教育について市民のみなさんと考えてきました。  

9月27日(金)にSDG4キャンペーンと伊奈学園中学校・立命館守山高校が協力し中学生・高校生を対象に特別授業を実施いたしました。 以下、その内容について報告いたします。 

こちらに掲載している動画とあわせてぜひご覧ください。  

今回は、伊奈学園中学校と立命館守山高校の計3クラスの生徒を対象に、「『紛争下の教育』を知り、声を届けよう」というテーマのもと、両校をオンラインでつなぎながら合同授業を実施しました。(開催場所:伊奈学園中学校) 

授業の前半では世界の難民や「紛争下の教育」について学び、後半では前半の内容を踏まえて、「私たちにできること」や「日本政府に求めたいこと」について、生徒が主体的に考え、自らの意見を全体に向けて発表したりしました。2024年度SDG4教育キャンペーンの総括として、これまでのオンライン授業でもお話いただいたロヒンギャ翻訳家の長谷川瑠理華さんと、ワールド・ビジョン・ジャパンの池内千草さんにご登壇いただきました。 長谷川さんにはロヒンギャ難民として日本で生活することの課題を、池内さんには難民の教育支援に携わることの意義などについてお話しいただきました。 

進行は伊奈学園中学校の英語教師で、開発教育協会(DEAR)の副会長である松倉紗野香先生が務めました。 

それぞれの内容に関して、生徒の声にも触れながらご紹介いたします。  

<前半:世界の難⺠、「紛争下の教育」について知る>  

⚫︎松倉先生によるオープニング 

はじめに、松倉先生より世界の難民や紛争下の教育の現状についての説明がありました。  

世界には約1億1,730万人の難民がいますが、このうち40%は子どもです。紛争が起きると、学校の校舎が破壊されたり、教材が失われたり、安全な空間がなくなってしまったりと、教育にも大きな影響が及びます。 
松倉先生が「安全に『学べる場所』がなくなったら?」と問いかけると、生徒からは「え、なんで、という気持ちになって、辛くなってしまうかもしれない」、「退屈で何もすることがなくなってしまう」、「コロナの経験から2ヶ月でもしんどい」という声が上がりました。 

ここで、教育が実際に危機にさらされている例として、ロヒンギャ難民の話が紹介されました。松倉先生はSDG4教育キャンペーンの一環で7月にロヒンギャ難民が多く住むバングラデシュのコックスバザールを訪問し、難民キャンプの概況や教育の現状について視察しています。バングラデシュの難民キャンプでは100万人を超えるロヒンギャの人々が暮らしていることを聞いた生徒たちは、自分たちが住む市町村よりもその人口がはるかに大きいことに驚いていました。また、松倉先生がロヒンギャ難民の教育について話すと、生徒たちは自分たちが日本で受けている教育と似ている点や違いについて考え、積極的に発言していました。 

⚫︎ゲストスピーカー長谷川瑠理華さんのご紹介 

続いて、在日ロヒンギャ女性である長谷川瑠理華(はせがわるりか)さんから、日本で生きるロヒンギャ難民としての経験や困難についてのお話がありました。迫害を受けて2001年に日本に逃れてきた長谷川さんは、現在は通訳・翻訳家として「2つの祖国」である日本とミャンマーをつなぐ活動に取り組んでいます。長谷川さんは日本にいるロヒンギャの人々が直面する壁として、日本語の読み書きが不自由なために生活が不安定になったり、仮に在留資格を取得できなかった場合は生活に困難が生じたりする点を挙げました。特に日本のロヒンギャの子どもたちが直面している問題について取り上げると、生徒たちは自分たちの生活と照らし合わせながら非常に興味深く聞いていました。最後に、長谷川さん自身が現在取り組んでいるロヒンギャ難民に対する支援について紹介しました。 

⚫︎ゲストスピーカー池内千草さんのご紹介 

長谷川さんに引き続き、国際NGOのワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)の池内千草さんからお話しいただきました。大学を卒業してから中高の英語教師となった池内さんは、2008年からWVJで開発援助に携わっています。池内さんは国際協力機構(JICA)の専門家として南スーダンの女性難民に対する保護に取り組んだ後、現在はロヒンギャの女性に対する支援を行っています。池内さんからは、WVJが行っている支援の内容について説明していただきました。 

<後半:私たちにできること、日本政府に求めたいことを考える>  

⚫︎長谷川さん×池内さんゲスト対談 

お二人が自己紹介を終えたところで、伊奈学園中学校・立命館森山高校の生徒からも質問を募集しゲスト対談を実施しました。お二人が国際協力に関わろうと思ったきっかけや「教育」に携わる理由について自身の経験談を交えて述べると、生徒たちは前のめりに聞き入っていました。以下、生徒からの質問を紹介します。 

・教育に関わる上で大変だったこと 

池内さん「現地の人が必要としていることを必ずしもできないこと。政府の人たちが出すお金や事務所の人員に制限があると、限られた条件の中でチャレンジしなければいけないので、現地の人たちが必要としているものを届けられているのかどうかという難しさは常に抱えています。」 

長谷川さん「先生の質を保つことが難しいこと。親としてはできるだけ良い教育を子どもに受けさせたいが、難民キャンプでは必ずしも先生の質が高いとは限らないです。また、電気が通っておらず教育を受けるのが難しい状況もあります。」 

・支援をする相手に対して気をつけていること、乗り越えにくいと思った壁 

池内さん「支援をする相手に対して一方的に「良いこと」を押し付けたくはない。現地の人々が何を重要だと思っているのかを常に聞き、お互いに理解し合いながら活動を進めることが重要だと考えています。一番の困難は、カンボジアで人身取引の事業を行っていたときに被害者の安全を確保しきれなかったこと。「その時々の最善を」と思って活動していますが、こちらが理想とすることはなかなか実現できないと感じました。」 

⚫︎私たちにできること、日本政府に求めたいことを考える 

まとめに入る前に、松倉先生は教育をみんなに届けるためには多くの人の協力が必要であり、難民の教育は国際社会として支えることが必要だと述べました。その上で、Education Cannot Wait(ECW:教育を後回しにはできない基金)は「紛争下の教育」を支える国際的な枠組みであり、緊急時の教育支援に特化した資金の拠出を行っていると説明しました。基金により多くの支援を集めるためには、市民の声が重要です。そのために、授業の内容を踏まえて、紛争下であっても教育を届けるために政府に取り組んでほしいことや、国際社会としてできることを生徒の皆さんにメッセージにしてもらいました。 

以下、伊奈学園中学校の生徒が考えた提案やメッセージを一部紹介いたします。 

「日本各地に難民に対する募金箱を増やすこと、日本に来た難民の方々が暮らしやすいような支援を整備すること、日本国民の難民に対する理解を深めてほしいということ。この3つを日本政府に求めたいです。」 

「一人10円でも集めることができれば大きな金額を寄付できると思いました。」 

⚫︎まとめ:ゲストスピーカーのメッセージ 

最後に、ゲストスピーカーのお二人より特別授業のコメントをいただきました。 

長谷川さん「80人いたら80通りのアイデアがあると思います。こうしたアイデアを書き出すことで形になっていきます。今日ここで聞いた話をここで終わりにしないでください。自分が知っていることを広めることによって輪が大きくなっていきます。自分にできることをできる方法で、やってみていただけたらなと思います。」 

池内さん「中学1年生と話しているとは思えないほど、1歩も2歩も踏み込んで問題について考えていることに感動しました。『知ってしまった者の責任』として、今日学んだことを誰かに伝えてみてください。そして、想像力を働かせて世界の問題について立ち止まってみて、ニュースの向こう側の人たちがどういう状況にあるか考えて、友達とは話してみてください。」 

今回の特別授業は、危機下の教育のために私たちや日本政府ができることを中高生と考える貴重な機会となりました。 今後、市民の皆さまから寄せられた教育支援に対する想いや考え(声)を持って、実際の政策提言に繋げていく予定です。ぜひ今後も私たちと一緒に紛争下の教育の重要性を訴える力となっていただければ幸いです。  

※授業内、および授業後のアンケートで伊奈学園中学校・立命館守山高校の生徒から寄せられた声は、JNNEを通して日本政府に届けられる予定です。  

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