キャンペーンの一環で、2024年11月7日に教育協力NGOネットワーク(JNNE)として財務省・NGO定期協議会に参加し、提言を行いました。この協議会は、政府とNGO・市民間で国際開発機関(MDBs)、国際通貨基金(IMF)、国際協力銀行(JBIC)、および国際協力機構(JICA)などの政策やプロジェクトに関する意見交換を行い、政策決定の透明性を高める目的で定期的に実施されています。
(詳しくはJACSESのウェブページを参照ください)
今回JNNEは「紛争下における国際教育協力と教育財政に関する国際局への期待について/2025年カナダG7サミット財務トラックに求めること」という議題のもと、教育財政をより重視していくよう財務省に訴えました。
JNNEの質問・提言並びに財務省の回答
今回は、2025年にカナダで開かれるG7サミットに向けて3点質問をしました。それぞれについて、ユースから補足も併せて報告します。
(1)G7財務トラックでは保健財政は重視していますが、今年の財務大臣・中央銀行総裁コミュニケにおける教育についての言及はAIの活用においてのみで限定的です。教育財政の重視を盛り込むよう、日本政府から来年のG7議長国であるカナダ政府に提案することをご検討いただけませんでしょうか。
(1)についてユースより補足
「私からは第110回世銀・IMF合同開発委員会に絡めて問題提起をさせていただきます。今回の日本国ステートメントを確認したところ、教育に関してはウクライナへの支援の話のみにとどまり、地球規模課題という文脈でも保健、気候変動・インフラ、債務問題、太平洋島嶼国しか取り上げておりませんでした。2022年には教育は一つの項目として個別で取り上げられていたことから、財務省として国際レベルの機関に対し教育の観点での働き掛けが弱まっているようにも受け取られると考えております。また、10月末に実施されたG7財務省・中央銀行総裁会議並びにG20 財務大臣・中央銀行総裁会議の声明でも教育への言及が非常に限定的だと受け止めております。以上のことから、財務省として教育に関するスタンスが弱まっているのではないかと懸念しております。質問1の通り、G7財務トラックにて「教育財政への重視」を盛り込むことをお願いしておりますが、併せて財務省の教育に対するスタンスについてご教示いただければと存じます。」
財務省より
「教育は、基本的権利であり人的資本の開発、開発の礎として欠かせないものと考えています。財務省としても、JICAを通じた二国間協力、世界銀行などの開発金融機関を通じての取り組みを行ってきています。G7の議題設定は、議長国カナダ政府の責任として主導されていくものと理解しており、現時点では、財務トラックで扱う議題は財務省としても把握できておりません。年末来年にかけて具体的議論がなされるものと考え、引き続き注視してまいります。」
(2) 保健財政が重視されている一方、教育財政はG7財務トラックにおいて拡充されない現状について、財務省が考える原因と今後の展望、市民社会ができることについて教えていただけませんでしょうか。
財務省より
「保健財政と教育財政の対比について話していただきました。保健財政については、ご指摘の通りG7財務トラックで大きく取り上げられています。これはユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けて持続的構築が不可欠であると同時に、新型コロナウィルス感染拡大で明らかになったように、パンデミックが保健のみならず経済社会に与える影響が大きいとの理解に由来するものです。G7での優先分野は、議長国の優先課題として決まっていくものです。G7財務トラックでもさまざまな課題があり、環境、サプライチェーンなど重要課題が山積みの状態ですべてを議論することはできません。G7に限らずさまざまな国際会議があるので、全体として考慮すべきだと考えております。」
(3) 前回のカナダG7の時になされたように、「開発大臣と財務大臣の合同会合」を開催していただくことを要望します。2018年のG7シャルルボワ・サミットにおいて、開発大臣と財務大臣の合同会合が開催され、開発のための革新的資金調達および女性の経済エンパワーメントについてのコミットメントが出されました。
財務省より
「来年も開発大臣と財務大臣合同会議が行われる可能性はあると思いますが、議題設定は議長国が行うものであり、カナダ政府の動きを注視したいと考えております。財務と開発の連携については、ブラジル議長国のもとG20では開発と財務関係者の合同タスクフォースにて飢餓のグローバル・アライアンスに積極的に参加するなど、財務省としても精力的に取り組んでいます。」
(2)(3)についてユースより補足
「キャンペーンの報告でもお伝えしたように、紛争、自然災害、強制移住の影響を受けた地域にいる子どもたちは、最も脆弱な立場にあります。彼らはしばしば学校に通う機会を奪われ、学びや成長の場、そして何よりも安定を感じられる場所を失っています。こうした地域の子どもたちにとって、教育は必要な構造を提供し、トラウマからの癒しと回復力の構築を支援するものです。しかし、これを実現するためには、持続可能な資金が不可欠です。
日本は昨年、初めて「教育を後回しにできない基金(ECW)」に資金を提供しましたが、現状の資金レベルではまだ十分ではありません。日本が危機に直面する子どもたちのために教育への投資を増やすことは、真の、そして長期的な影響をもたらします。それによって支援するのは単に個々の子どもたちだけでなく、危機に直面する地域社会全体の平和と安定の基盤を築くことになります。
2025年のカナダでのG7サミットを迎えるにあたり、G7財務トラックにおいて日本が教育資金に対して、より大きなリーダーシップを発揮することを、私たち若者としても強く期待しています。日本は健康・保護の分野への投資に伝統がある一方で、教育を人材開発の重要な柱として位置付ける機会もあります。現在、健康と教育の資金配分に不均衡がある中で、教育への支援を強化することは、日本の「人間の安全保障」や社会的なレジリエンスの向上に寄与すると思います。また、財務省として、開発セクターと協働することは教育財政にとっても非常に意義のあることだと考えております。」
子どもたちへのメッセージ
質疑応答の後、2024年度SDG4教育キャンペーンの授業に参加した子ども・ユースから寄せられた声を財務省の皆さまに届けました。これを受け、財務省国際局開発政策課の鈴木様より、子ども・ユースに向けて以下のメッセージをいただきました。
「教育への投資がもたらす効果は、非常に広域なものです。今回の報告を受け、難民キャンプのような危機下では、特に複合的な危機にあるとリアルに理解することができました。財務省としても、世銀などを通じた貢献を通じて教育分野に取り組んでいます。直接的な教育支援でなくても、保健・栄養や災害対策など、子どもたちの教育の機会損失に歯止めをかけるものだと考えております。」
今回の定期協議会では、「財務省として国際会議に参加・発言することもあり、今回のように草の根の活動を知ることはありがたい機会である」というコメントもいただきました。紛争下の教育に対する財政支援が拡充されるよう、引き続きSDG4教育キャンペーンを通じて声をあげていきましょう。