教育の機会を奪われるウクライナの子どもたちと、攻撃される学校

ウクライナ東部では2014年から約8年にわたる紛争が続いていました。そして、2022年2月に東部以外の地域でも紛争が激化して以降、さらなる危機に直面しました。このウクライナ危機が発生してから2年以上が経過した今も、危機は終わる見通しが立たず、国内外で人々の避難生活は続いています。

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ウクライナの紹介

ウクライナは、東ヨーロッパに位置する国です。面積は約60万3,700万㎢で日本の1.6倍ほど、4,159万人(ウクライナ危機の前、2021年時点)が暮らしていました[1]。
小麦やとうもろこしを育てており、「ヨーロッパの穀倉」と言われ、国土の約7割が農用地です[2]。大きな河川があり水に恵まれていることや、栄養豊富な土があるため農業が盛んです[3]。
首都のキーウには、歴史的建造物が数多くあり、世界遺産である「聖ソフィア大聖堂」や、世界的に有名なウクライナ国立バレエの本拠地であるウクライナ国立歌劇場が有名です[3]。
ウクライナ料理には、「ボルシチ」や、「ワレニキ」などがあり、ワレニキは小麦粉の皮でじゃがいもなどの野菜や、ブルーベリーなどの果物を包んだものです[3]。

クリーム色がウクライナであり、首都はキーウです。(参考:外務省)

ウクライナの状況

ウクライナ東部では2014年から約8年にわたる紛争が続いていました。そして、2022年2月に東部以外の地域でも紛争が激化して以降、さらなる危機に直面しました。このウクライナ危機が発生してから2年以上が経過した今も、危機は終わる見通しが立たず、国内外で人々の避難生活は続いています。

子どもを含むウクライナ市民の647万人以上が国外に避難しており、また368万人以上が国内での避難を強いられていると推定されています(2024年4月時点)[4]。さらに、この危機はウクライナで暮らす人たち、特に子どもたちの生活を一変させました。学校やそのほかの教育施設は、単に学習の場であるだけでなく、子どもたちにとって重要な社会とのつながりを確保したり、安全な環境を提供する場所でもあります。しかし、ウクライナ全土で、約40%の子どもたちが、学習施設の不足のために継続的な教育を受けることができていません。紛争の前線に最も近い地域では、学齢期の子どもたちの半数が教育を受けることができていません[5]。

また、避難した人の中には一人で逃げてきた子どももおり、虐待や性的な被害にあったり、人身取引にあうリスクが増えています。このような環境の中で、子どもたちは目に見えない傷や、生涯にわたる精神的苦痛を負ってしまう場合があります[6]。 

ウクライナの子どもたち

イリナさんとニコリナさん

安全を求めて、多くの家族や子どもたちが国内や国外に避難しています。キーウ出身、妊娠7ヶ月のイリナさんは10歳の娘ニコリナさんとともに避難しました。混雑から逃れるために、娘と一緒に列車の中にある使われなくなったトイレに身を寄せて移動しました。ニコリナさんは、「駅の近くに来たとき、たくさんの兵士がいて怖かったです。機関銃を持っている人もいれば、ライフルを持っている人もいました」と、話します[7]。

また、13歳のマリアさんは、学校の教室だったところで避難生活を送り、60人でトイレを共有して暮らしています。「地元を離れるとき、もう爆発音が聞こえないと思うとうれしかったです。でも、自宅のアパートから避難しなくてはならなかったのは悲しかったです。今、私たちはこれまでと違う環境の中で暮らしています。すべてが変わりました。体は大丈夫ですが、精神的には大変でした。家に帰れることを望んでいます。」と話します[8]。

この危機は、子どもたちに身体的、そして精神的に大きな影響を及ぼしています。ウクライナの家族を対象に実施された調査では、85%が精神保健・心理社会的支援を必要としていることがわかりました[9]。さらに、多くの子どもたちが質の高い教育を受ける機会を奪われています。


[1] 外務省 欧州 ウクライナ
[2] 農林水産省 「ウクライナの農林水産業概況」
[3] 小学館 「ウクライナがどんな国なのか知りたい! 主要産業から観光地まで」
[4] UNHCR, Operational Data Portal, Ukraine Refugee Situation.
[5] UNISCO, Ensuring teaching and learning continues in Ukraine.
[6] UNICEF, War in Ukraine: Support for children and families.
[7] セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン「【ウクライナ危機】紛争から3ヶ月:「どこで、どうやって暮らしていけばよいか分からなかった」-ルーマニアに避難した母親たちの話」
[8] セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン「【ウクライナ危機】紛争から100日-多くの学校が被害に」
[9] セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン「ウクライナから避難してきた子どもたちへー世界で最も過酷な紛争地域で暮らす子どもたちからのメッセージー「運動をしよう、絵を描こう、そして自分を信じよう」


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