【活動報告】SDG4教育キャンペーン:8/28(水)「オンライン授業③ 難民キャンプを訪問した先生と考える―教育協力のために日本からできること」を開催 

現在実施中の「SDG4教育キャンペーン2024」では、6月より、毎月1回のオンライン授業を行い、紛争下の教育について市民のみなさんと考えてきました。

8月28日(水)に「オンライン授業③ 難民キャンプを訪問した先生と考える―教育協力のために日本からできること」を開催しましたので、その内容について報告いたします。

こちらに掲載している動画とあわせてぜひご覧ください。

3回目の実施となる8月28日(水)のオンライン授業は、参加者への質問を交えながら、紛争下でも教育支援を継続するために私たちにできることをテーマに実施しました。第2回の授業に引き続き、バングラデシュ・コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプを訪れた日本の中学・高校の先生である松倉先生・関先生に加え、ワールド・ビジョン・ジャパン支援事業部の池内千草さんにご登壇いただきました。

ロヒンギャ難民キャンプおよびホスト・コミュニティにおける教育事業をはじめとして、南スーダンの例にも触れ、教育支援に共通する意義と課題について考えました。

進行はSDG4キャンペーン2024事務局の松山晶さん(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)が務め、<第1部:なぜ危機下でも教育が必要?><第2部:危機下でも子どもたちに教育を届けるには何が必要?><第3部:教育への支援を拡大するためには>という3つの問いに沿って実施しました。

それぞれの内容と、参加者の皆さまからお寄せいただいたコメントについてもご紹介いたします。

<第1部:なぜ危機下でも教育が必要?>

まずはじめに、参加者の皆さまに以下の問いについて考えていただきました。

「今、あなたが、健康に、安全に、幸せに生活をするために大切だと思うものは、次のどれですか?」

13の選択肢から、「食べ物・水」、「安全に生活できる場所」に最も多くの投票が集まり、次いで「家族・友人」や「教育」を選んだ方も多くいました。(複数選択)

続いて、質問が少しだけ変わりました。

「もしあなたが今、紛争の影響を受けていたら、あなたが、健康に、安全に、幸せに生活をするために大切だと思うものは、次のどれですか?」

1回目で投票が多かった選択肢に加え、「差別・暴力を受けないこと」や「きれいな空気」への投票が増え、「教育」も半分ほどの方が選びました。

ここで、松倉先生は教育の特殊性について、以下のように述べました。

(松倉先生)

「人それぞれの価値観やその時々の状況、また一日の中でも大事だと思うものが変化するというようなこともあるかもしれません。本日は教育をテーマにしていきますが、皆さんは改めて教育の特殊性について考えたことはありますか?教育といっても様々な形態はありますが、その特殊性の一つに、ある程度仕組みや体制が整っている状況で発揮されるものという点を挙げたいと思います。これを言い換えると、仕組みを整えることで、紛争や危機下であっても、教育を継続して受けられる人を増やしていけるかもしれません。

しかし今、例えばロヒンギャ難民キャンプの中では、教育に必要な資金は10分の1しか賄われていない状況です。」

続いて、関先生より、

「現地では『非常に楽しい』『安心できる』といった子どもたちの教育に対する想いをたくさん聞くことができました。保護者や先生など、大人も共通して教育の重要性を感じていました。教育は衛生面や安全面など、生きるということに直結したスキルを身につけるものです。一方で、支援に関わる方々は、ロヒンギャ難民問題が時の経過と共に忘れ去られ、教育の継続が危ぶまれていることに強い危機感を抱いていました。

改めて、紛争などの危機下でも、なぜ教育が重要なのでしょうか。

(関先生)

「大前提として、すべての子どもは教育を受ける権利を持っています。そしてバングラデシュに行って目の前で実感したことですが、何より子どもたちは教育を受けたいと願っています。紛争下にあっても、教育を通して子どもたちは希望を感じています。多くの仲間と学ぶ環境にアクセスできる『安全性』と、子どもが社会的なスキルを身につけて振る舞い方を学んでいくという『安心感』から、教育によって得られる好循環があると感じました。」

<第2部:危機下でも子どもたちに教育を届けるには何が必要?>

第2部では、参加者の皆さま自身に、もし自分が支援者なら、「特にどのような教育支援を届けたい」かについて考えていただきました。

最も多くの回答が集まったのは「性別、障がい、国籍や考え方などに関わらず、すべての人が平等に受けられる」でした。ここで挙げられた選択肢はINEE(Inter-Agency Network for Education in Emergency)が基準としている、紛争や災害などの緊急下で教育支援を行う際に、配慮すべき指標の概要です。INEEは、紛争や災害が起こった場合においても、速やかに教育分野における支援を始められるよう設立されたネットワーク機関です。

ここでワールド・ビジョンの池内さんより、世界の紛争下における教育支援全般に共通するポイントについて説明をいただきました。

「先生方のお話に私が加えてお伝えしたいのは2点です。まず一つ目は、長期的な支援の必要性です。今世界で起きている紛争は、どれも長期化しています。その中で、初動の調査を経て、緊急医療、食料や物資の配布、給水などのニーズにまず対応していくことになります。その中で、教育のニーズは何なのかも、念頭におきながら調査していくことが非常に重要だと強調したいです。」

「二つ目は、世界各地での紛争が広域化しているという状況です。私は南スーダンで暴力の被害を受けた女性の支援に携わっており、彼女たちが自ら収入を得られるための自立支援を行っていました。彼女たちは計算をしたり、商品を売る仕組みを理解したりすることができませんでした。私たちが当たり前のように受けている教育で、生きるためのスキルを身につけなければ、そうした『当たり前』のことができなくなるのだと実感しました。こうした状況は、南スーダンや他の紛争の影響を受けている国でも共通していえるものと考えています。」

ここで、参加者へ4つ目の質問が投げかけられました。

「危機下においても、すべての人が教育を継続できるためには、何が必要だと思いますか?」

フリーアンサー形式のこの質問には多くの回答が集まりました。以下一部紹介いたします。

「教育に目を向けられるくらいの基本的な衣食住が整っていることが大前提として重要だと思う。また、教育を受ける心の余裕を持たせるまでの心身のケアが必要。」

「安全に教育を受けられる場所があったり、周りの人と協力しながら教育を受けられることが大切だと思います。」

「命を守ることが一番大切な紛争下で、当事者の皆さんだけでは、教育というものの重要性に気づかなかったり、重要と思っていても優先できない環境だと思います。外部からの支援という形で(当事者の主体性を大切にしながら)教育の重要性を理解してもらったり、環境を提供し、可能にすることが重要だと改めて感じました。」

一方で、紛争下であっても教育を途絶えさせないようにするためには、資金面でのサポートが非常に重要です。

(松山さん)

「2030年までに、『低・中所得国がSDG目標4を達成するために必要な資金のうち毎年平均970億米ドル(日本円で約15兆円) 足りない (出典:UNESCO 2023)』と指摘されています。日本の政府開発援助(ODA)資金において教育分野の割合はわずか4%で、先進国*30カ国中下から2番目の順位となっています。私たちは日本政府に対して教育への支援を増やしてほしいこと、特に、危機下での教育は後回しにできないとして、Education Cannot Wait基金(ECW)への拠出をして欲しいと訴えています。」

※ ここでいう「先進国30か国」とは、OECD開発援助委員会(DAC: Development Assistance Committee)のことを指しています。

※教育資金については、こちらに掲載されている動画「教育の課題を解決するために必要な資金はどれくらい?」もご参照ください。

<第3部:教育への支援を拡大するためには>

教育支援の拡大を訴える上で、市民の声が大きな力を持ちます。

G7の中で唯一ECWへ資金提供をしていなかった日本ですが、教育協力NGOネットワーク(JNNE)とユースの働きかけにより、2023年12月に、日本政府が初めてECWへ4億円の拠出を行うことを決断しました。まだ課題は残りますが、これは市民の皆さん、特に若者の皆さんが声を上げたことによって得られた大きな成果となりました

(松山)

「紛争、そして自然災害などの様々な危機下においても、教育を受けられるようにするためには、市民の皆さんの声が必要です。今日のオンライン授業を含め、より多くの人たちがキャンペーンに声を寄せてくださることによって、こうした政策の変化につながりやすくなります。」

ここで参加者の皆さんに向けて最後の問いが投げかけられました。

「紛争などの危機下にあって教育が『希望』となると思う理由について、あなた自身の経験などをもとにご意見をお聞かせください。」

参加者の皆さまの力強く、想いのこもった回答が数多く寄せられました。ここでは一部をご紹介させていただきます。

「紛争下など先が見えない状況下で、教育を受けることにより将来について考えるようになり、生きていく意味を見出せると思う。」

「教育を受けることで選択肢が存在する等の、気付きの能力を身に着けられる。その蓄積がやがて紛争の解決に繋がるのではないか。」

「我が家は貧困で、高等教育は働きながら修了しました。大変でしたが、未来につながるのは教育ですし、全く迷いなく学び続けることを選択しました」

「教育が「希望」となるのは、教育によって生きるためのスキルを身につけることができ、それによって危機を抜け出したり、自分の将来を切り開いたりするきっかけにすることができるのではと思います。」

最後に松倉先生から、以下のようなまとめがありました。

「現地でロヒンギャ難民問題に取り組む国際機関や他のNGOのスタッフともお話をする機会がたくさんありました。その中で印象に残っているのは、支援者の一人が仰っていた、 “The world will see us through you.”(世界の人々は、あなたを通して私たちを見る)という言葉です。問題の報道が減ったとしても、それが解決したというわけではありません。から忘れ去られたくない、一人でも多くの人たちに現状を伝えてほしい、というメッセージをいただきました。教育支援を継続・拡充していくためには、市民の皆さんの声が必要です。今日の授業を通して得た学びを、ぜひ周りの方に伝えたり、学校の授業などでも活用したりしていただければ幸いです。」

今回の第3回オンライン授業は、危機下の教育支援の重要性について、参加者の皆さまと一緒に考える授業となりました。

9月以降、市民の皆さまから寄せられた教育支援に対する想いや考え(声)を持って実際の政策提言に繋げていく予定です。ぜひ今後も私たちと一緒に紛争下の教育の重要性を訴える力となっていただければ幸いです。 ※オンライン授業内、および授業後のアンケートで皆さんから寄せられた声は、JNNEを通して日本政府に届けられる予定です。


アーカイブ動画は、以下のリンクよりご覧ください。

【第1部】なぜ危機下でも教育が必要?
【第2部】危機下でも子どもたちに教育を届けるには何が必要?
【第3部】教育支援を拡大するためには

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