
現在実施中の「SDG4教育キャンペーン2024」では、全4回のオンライン授業を行い、紛争下の教育について市民のみなさんと考えます。
7月8日(月)に「オンライン授業② 難民キャンプのあるコックスバザールからー子ども・保護者・教員・支援者、それぞれの想い」を開催しましたので、その内容について報告いたします。
こちらに掲載している動画とあわせてぜひご覧ください。
2回目の実施となる7月8日(月)のオンライン授業は、キャンペーンの一環としてロヒンギャ難民キャンプや受け入れ地域を訪問している日本の中学・高校の先生、松倉先生、関先生、また現地で支援活動を行う田部井梢さん(セーブ・ザ・チルドレン バングラディシュ駐在員)・Shahidul Haqueさん(セーブ・ザ・チルドレン・バングラディシュ)がコックスバザールから現地の様子などを伝えました。
進行は SDG4教育キャンペーン2024事務局の川口真実さん(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)が務めました。
難民キャンプが今まさにどのような環境なのか、課題は何か、そして学習支援センターの子どもや先生、支援者たちの教育をめぐる想いについて報告があり、紛争下の教育の重要性を改めて感じる授業となりました。
授業は、<第1部:ロヒンギャ難民について> <第2部:現地の人々の教育への想い・考え> <第3部:国際社会・日本にいる私たちにできること> の内容に沿って実施しました。
それぞれの内容について、ご紹介いたします。
<第1部:ロヒンギャ難民キャンプについて>
まず、田部井さんより次のような説明がありました。
(田部井さん)
ロヒンギャは約9割が仏教徒のミャンマーに暮らす、イスラム教を信仰する少数民族です。長年の差別や迫害により多くのロヒンギャの人々がバングラディシュに避難し、暮らしていますが、「難民」として認められておられず、難民であれば得られるはずの権利がありません。例えば、キャンプから自由に移動できない、就労(働くこと)ができない、バングラディシュの言葉を勉強してはいけないなどさまざまな制約があります。
難民キャンプの広さは17㎢で千葉県の浦安市とほぼ同じですが、そこに約95万人(秋田県民の人口と同じぐらい)のロヒンギャ難民が住んでおり、人口密度がとても高いです。竹やビニールシートで作られた密集したせまい住居に6~8人程が住んでおり、風通しも悪くエアコン等もないため厳しい暑さの中で暮らしています。また、トイレや水場は共同で屋外に設置されており、食事のほとんどは人道支援団体からの支援でまかなわれています。栄養不良の子どもたちも多く、17%の子どもたちが精神的に深刻なダメージを負っています。
次に、松倉先生と関先生から、難民キャンプにおける教育について次のようなお話がありました。
(松倉先生)
私たちは今回の現地訪問で、難民キャンプ内のラーニングセンターに行き、小学校1~2年生の授業を見学しました。授業の進め方は日本と似ており、また障害のある子どもをサポートする先生もクラスにおり、カリキュラムも配慮されていました。さまざまな子どもたちが一緒に学べるインクルーシブ教育は日本でも実践されていますが、難民キャンプの学校からインクルーシブ教育について私たちが学ぶことがあるのではないかと思いました。
(関先生)
Community-Based Learning Facilities (CBLFs)という地域の人の家を借りた学びの場を見学しました。ここは女の子(11~18歳)だけのための安全な場所で、地域の目が行き届いています。勉強として取り組む課題はシンプルですが、ペアワークやプレゼンテーションといった内容もが織り交ぜられ、コミュニケーション方法や考え方を学ぶというライフスキル習得の側面が大事にされていることが印象的でした。
<第2部:現地の人々の教育への想い・考え>
現地訪問中、松倉先生、関先生は、ラーニングセンターに通う子どもたちや保護者、また支援を行う人々にインタビューを行いました。現地の人々の教育への想いや考えについて、関先生より次のようなお話がありました。
(関先生)
私たちは、現地訪問中、さまざまな人に教育への想いを聴きました。
子どもたちからは「最初はラーニングセンターがどんな場所かわからなくて不安だったけれど、友達もできて今は楽しい。もっと勉強したい。」という声が聞かれました。また、現在子どもたちに提供されていない高等教育(大学など高校卒業後の教育)について、「高等教育を受けたい」と真っ直ぐな目で将来の想いを話してくれた子の言葉も印象的でした。保護者からは「子どもが学校に行って、親子関係にも変化があった。謙虚さや忍耐強さが身についたと思う。」という声が聞かれました。
先生からは「教育を通じて、子どもたちが良いことと悪いことを区別できるようになった。衛生面や安全面についての知識も身に着けている。」というお話があり、子どもたちはただ単に勉強するだけではなく、生きる力を習得していることがわかります。また、ホストコミュニティ(受け入れ地域)の先生からは「もし教育がなかったら子どもたちは夢が持てない。犯罪も増えるだろう。地域の安全のためにも教育は大切だ。」という声も聞かれました。支援者からは「子どもたちをはじめ、当事者たちの意見を大切にしてプログラムを改善している」「ロヒンギャの人々はさまざまな制約が多く、自分たちで何とかできる範囲が限られている。彼らが人間らしい当たり前のことをできる社会を目指していきたい。」といった想いを教えていただきました。

<第3部:国際社会・日本にいる私たちにできること>
第3部では、これまでの話を受け、国際社会・日本にいる私たちにできることについて考えました。まず、SDG4教育キャンペーン事務局のセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの川口さんから次のような説明がありました。
(川口さん)
紛争や災害などの危機が発生すると、現地での直接的な支援活動に加え、このキャンペーンのような啓発活動や政策提言を通して実際に起きていることについて考えたりします。このような活動を日本政府や国際社会が後押しする方法の1つが、支援のための資金を支援団体等の関係機関に拠出することです。
SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」を低・中所得国が達成するには、毎年平均970億米ドル(日本円で約15兆円)不足していると算出されています。そのため、私たちJNNE(教育協力NGOネットワーク)は教育分野への資金(政府開発援助)の増額、特に緊急下の教育に関する資金の拠出を求めています。
続けて、現地スタッフが日本にいるみなさんにしてほしいこと、知ってほしいと思うことについてお話しました。
(Shahidulさん)
「政府への対応に加え、私たち一人ひとりの市民が協力し、声をあげていくこと。ロヒンギャの子どもたちが夢や希望を持って生きていくために、フルサポートを継続していきたいと考えています。」
(田部井さん)
「安心して学校に通うということの重み、大切さを知って考えてほしい。こちらでは日中でも銃声が聞こえることもあります。そのような中で、子どもたちは学校に行っている間は、自分の思っていることが言えたり、やりたいことができるから安心して過ごせます。安心できる場所をつくることも教育が果たす役割です。」
今回のオンライン授業②は、危機下でも教育をあきらめないという、子どもたちをはじめとするさまざまな人々の想いに触れる授業となりました。8月には紛争下の教育問題に関心のあるユースや子どもたちと共に行う第3回のオンライン授業を開催予定です。詳しくは、後日こちらのキャンペーンウェブサイトでお知らせします。ぜひ引き続き私たちと一緒に紛争下の教育について知り、考えましょう。
アーカイブ動画は、以下のリンクよりご覧ください。